表紙へ

Short Stories 2022 Automatic For The People

(W)AVE Vol.2【musit オリジナルZINE】に短編が掲載

「だからニルバーナは聴かない。俺はこのアルバムを聴いて生きることを決めたのに」と一人くらい声を上げるべきだと思って書いた。このアルバムのブックレットは横に長い。

――夜中にヘトヘトになるまで漕いで街をぐるぐる回って――暗い水底に住む人にしか気づかない静かな波がある――でも、死にはしない――迷子は笑い――わかるよと言った――虹色に光りながら滑り出たトレーにディスクを――でも、死にはしない――遠い故郷だ――暖かく雨のよく降る薄暗い四川省の土が匂い始めた――著莪は居心地悪そうに立ち上がり――でも、死にはしない――彼女は廊下と間違えて居間の電気を消してしまった――でも、死にはしない――「そのままで良いよ」と――缶ビールを空け、一本ずつ二人にも勧めた――迷子は首を振る――オレンジ色の世界を思い浮かべる。初めての音楽は人を包み吸い込み誰かの記憶を捏造していく――著莪は「ここは日本よ」と言いながらくらげを睨み――でも、死にはしない――車のコンポにCDを入れた。ドライブが始まる――

ここで買えます↓

https://store.dandy-music.com/product/musit-wave-vol2/