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bum  第3章 aki ..8

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 やはり最後僕らは歩いていた。何でもない昼下がり、珍しく晴れて、空は青くあるべきだったが焼き畑の烟が空に散り散り、太陽の光、鈍く撒き散らされ、真珠の内側で歩いているようで、バナナやパパヤがその下に生え、ゴムの木が生え、路肩のオーチャードや植林を見ているうちに僕らは何度か牛と水牛の群れに足止めをされ、やがて僕たちの旅はタイへ戻り、終わりに近づいた。ラオスを中部から北部へ、最後南西に折れて、三角国境に終着した。僕とホタルの二人での旅は終わったのだ。

 僕らは水に影ある旅人であり、旅にあけくれ、かれに触れ、これに触れ、うつりゆく心の影をありのままに写した。

 チェンセンで紫のモーターサイクルを買い、僕たちはイサーンへ帰る。これを運転するのは僕だ。ホタルが言った。

「私たちはこれからもずっとこの紫のモーターサイクルで旅を続けるの。永遠に」

僕は語らず黙ってエンジンをかけ、メコンを眺め、別れ、また出会い、故郷と言うべきイサーンの世界へ戻った。ひたすら夜を通して走り続け、カラシンにて一泊、また翌朝走り、ガススタンドでコーヒーショップに入った。

ホタルはコーヒーを片手僕に行った。

「丘へ行こうか」

 僕はどの丘なのかを知っていた、導かれるようにそこを目指した。彼女が時折口にしていたあの丘、僕と彼女が夢を見ながら話したあの丘へ向かった。ブンカーン県に入り、ユーカリプタスの植林の間を紫のモーターサイクルは走っていた。