ここにあるのはどれもタイに来て初めの頃の話ばかりで、どれも断片的で半ば救いようのない、救いなんてものはない、ただ我々は生きていくばかりだった。初めのうちは外国人の僕を珍しがる人らとの忙しい日々が続いたが、それが実は何にもならない人間関係にすらならないと気付いた時に僕は自分がここで本当に一人であると気づいた――タイ語を喋ることができなかったのも一つだが、まずは時間をかけて文化の壁を上らないといけなかった。最初の人間らと友達になれなかったのは彼らが飽きてしまったからだった――僕が持っていたのは外国人に対する珍しさだけだった、それ以外に面白いことは特になければ、普通の人の持っている文化の下地もない、もっと言えばそんなものがあるとすら知っていなかった。しかも、非日常を求めここへ来たはずの僕もすぐ飽きてしまっていた、くだらない期待のせいで日常を見下していたらしい。仕方がないのでバスでショッピングモールへ行き金魚を買った。魔怪と名前をつけて仲良く暮らした。