夕方、雨が降り出したとき僕は池のほとりに金魚鉢を置いてアレンと話していた。美味そうに彼を見るのはやめてやってくれと頼みこんでいたところだった。前触れもなく風がふっと浮き上がり、次の瞬間にはビー玉のように重たい雨粒がばたばた降り出した――池の水は空気に馴染み、金魚鉢と空も同じく、すなわちその時は池と金魚鉢の間の境界も曖昧になっていた。アレンはそんな風には思っていないと言ったが、雨音はそれよりも大きく僕にしか彼の声は聞こえなかった。魔怪は有頂天に上がり始めており――斜めって窓から降り込む天気雨ならまだしも真上からこう来ると橋があるのと同じだった――そんな状態を彼は知ったことがなかったのだ。また、彼女がふと現れて魔怪にも僕にもまとわりつくのは、ブーゲンビレアから見れば面白くないようだった――しかし彼女はブーゲンビレアをも撫で、紅を褒め、抱きしめ、濡らし、幸せな気持ちにしていた。ブーゲンビレアは不本意だと僕に同意を求めたが、雨に惚れ込んでいる僕が彼女に同情できるはずなんかなかった――アレンの方を泣きそうになりながら見つめるブーゲンビレア、沈みそうなくらい雨に乱されたブーゲンビレア、あくびをしていたアレンは優しく偽花に微笑んだ――彼女は膨らませていた口を元に戻した。アレンだけは雨に対して特別な感情を持っていなかった、アレンはいつも彼女の側にいたからである。魔怪は叫び、水中となった鉢の壁面を旋回しながら浮き上がり、ブーゲンビレアを一人残したまま水面からクジラの跳躍を果たした――大げさな水飛沫は雨の重力を弾いて上がり上がり、魔怪も推力に身を委ねて上昇する、その先にある彼女の慈愛に近づこうとして――魔怪は立ち竦んだ僕、そこにいる唯一の人間の目の寸前に泳ぎまわり、水を叩き、自由を滑って踊り回った。しかしそれも長く続かなかった――雨も疲れ果て、弱まり、やがて魔怪は落ちた。金魚はアレンの目の前の枯葉でびたびたと跳ねていた。幸い枯葉のクッションの上に雨の膜はまだ続いていた。雨は降り止まないが小さくなっており、アレンは黄色の瞳で魔怪をじっと見つめていた。喉を詰まらせて跳ねることもできなくなった魔怪に、太い筋肉の腕をアレンは伸ばし――鋭い鉤爪のある掌を上手に広げた、まるで人の手のように繊細にそれは魔怪を拾い上げた――二股の長い舌でアレンは彼の側線を撫でた、そしてぽちゃんと金魚鉢に落とした。咳き込みながらエラを深く広げ、空気を吹き出しながら魔怪は水面を力無く彷徨った、ブーゲンビレアは逆さまになったその金魚の三色の腹を抱いた。元気であるには違いないらしく、花の抱擁にしばらく沈んだ後にくるんと身体を戻し泳ぎ始めた。中腰で心配そうに水面を覗いていた彼女は喜び、また元のように池べりに腰掛けて強く降り出した。足も腕も身体もずぶ濡れで僕は金魚鉢を挟んで彼女と話していた――池の中から顔を突き出して見守っていたアレンは申し訳なさそうにしていた。やがて彼女は滑らかな衣についた枯葉を払うと立ち上がり帰っていった。帰り道途中までアレンが来ていたが、結局別れの角で長いこと立ち話になり、気づけばなかなかさよならを言えない僕らも、金魚鉢の中で疲れ呆けうんざりしている二人も、どこか少年時代を懐かしんでいた――