暗くなり始めてナマズが部屋に来た。木造寮舎の二階西の端に僕の部屋はあった。ナマズの部屋は一階の東で近い方ではなかったが、同じ棟なのでやはりことあるごとに来た。丁度夕食を食おうかというところだったので一緒に行くことになった。大学内に走る無数のカナルの網は、絡み合うところでは池を作っていた。彼はよく池の性格について話した。寮舎の窓からみえる新しいコンクリート張りのは短命な子供だ、と彼は言った。だが、あれは恵まれている。
食堂へ向かう途中にある小さな池は年の行った小柄で美しい老人だ。一本のコンクリートの橋が渡されており、東西にその細長い池は別れていた。東には蓮の葉の生い茂り、西では澄んだ黒い水に合歓木が蔽い被さっている――すっかり澄んでいる池は多くなかった。乏しくあり続けることの潔さよ、魚も多くは抱えずにいる、美しいだろう。人の光に大地は満たされていた――雨は何時の間にか止んでいた。静かに地面に膜を拵えていた雨は川へ溶け下り、蟻たちが落ち着きなおしていた。食堂の道すがらに別の寮舎があり、そこからぞろぞろとタンクトップの威勢良さげな若者ら、バスケットボールを突きながらコートの方へ追い越していった。